映画「恋や恋なすな恋」(1962年・東映)
2010年08月08日 (日) | 編集 |
この映画が大好きな熊猫屋です。
映画の色彩模様と、斬新な(装置など演出面の)展開はもっと評価されていい作品だと思っているのですが、好き嫌いも分かれる作品でもあるような気がします。
(半分感覚で観る作品なので、理屈がなければダメな方や、リアルを求めるには不向きかと)

特に「陰陽師関連」とか「歌舞伎舞踊」に日頃から関心がある方は、予備知識無しで観るより二倍以上は楽しめると思うのですが、如何でしょうか?
普通の時代劇の感覚で観るのとちょっと違うと感じるし、半ばファンタジーですよね。

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(あらすじ)※東映チャンネルより
人形浄瑠璃の名作『芦屋道満大内鑑』と清元の『保名狂乱』を題材に、内田吐夢が構想を練り上げたファンタスティック・ラブロマンス。
時は朱雀帝の治める平安時代。無実の罪を着せられ流浪の旅に出た天文学者・阿部保名は流れ着いた先で美しい娘と恋におちる。
ある日、保名は都から来た狐狩りを妨害し、狐狩りの連中は腹いせに娘を連れ去ってしまう。
白狐は助けられた恩義に報い、また悲嘆に暮れる彼の心を癒すため、娘狐を娘そっくりに変化させるが…。

(キャスト)
阿倍保名:大川橋蔵
榊の前/葛の葉/葛の葉(狐):瑳峨三智子(三役)
加茂保憲:宇佐美淳也
後室:日高澄子
芦屋道満:天野新二
狐の老爺:薄田研二
狐の老婆:毛利菊枝
小野好古:月形龍之介
悪右衛門:山本麟一
藤原忠平:柳永二郎
藤原仲平:原健策
岩倉治部大輔:小沢栄太郎  など

監督:内田吐夢
脚本:依田義賢 ←大映の「西鶴一代女」とか新東宝の「雨月物語」猿之助さん主演の「残菊物語」などなどの脚本を書かれた方らしい
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(感想等)
この映画、色彩の妙というか、色の使い方が単色で一面塗られるような如くの勢いの場面が何か所もあるのですが、
その色が場面をよく現わしております。
最初の絵巻物から、おどろおどろしいい色に変化して都の異変と不吉さを。
夜の闇のとその不安を、
踊る保名の黄色の花の絨毯に、俗世を離れた心模様と保名の心の乱れをを。
枯れたススキが生い茂る野原とすすけたオレンジ色の空・・・


加茂保憲には阿倍保名と芦屋道満という弟子がいたのだけれども、加茂保憲の養女の榊の前を愛し、
真面目な保名に跡目を継がせようと考えている加茂保憲。
しかし、それを知った保憲の後室と結託している道満らは悪右衛門に命じて保憲を暗殺(!)
時の帝の朱雀帝が、昨今の人心の乱れを気にされて保憲に命じて「金烏玉兎集」を解読させて原因をつかもとしていたが、その矢先の暗殺。
明確に後継ぎが決まっていなかった中、後室と道満は(「金烏玉兎集」を奪ったのは自分達なのに)、
榊の前と保名に濡れ衣を着せ、拷問されたうえに榊の前は自殺、傷心の保名は「金烏玉兎集」を奪ったのが後室らと知り発狂、後室を斬った後に心狂うたまま流浪の旅に出てしまいます。
(後室を演じた日高澄子さんの憎々しげな表情といい、傲慢不遜なところが良く出てます^^;)


榊の前の小袖を半身に掛け、髪の乱るるままに保名が黄色の花の絨毯の中で踊るのが
清元の「保名狂乱」。


歌舞伎出身で、踊りが巧いらしい橋蔵さんの本領発揮ですね(・▽・)V
現在の(踊りの)保名を完成させたのが、橋蔵さんの養父である六代目菊五郎丈であることを何かの本で読んだのですが、
それを思うと尚更に、橋蔵さんの想いたるや・・・とじ~んとしますです。
踊りの冒頭の清元志津太夫の声で流れる「恋よ恋 われ中空に なすな恋」が、この映画のタイトルの元ではないかと。
尚、当時のこの映画について特集している「別冊近代映画」(1962年)によると、
内田吐夢監督や玉木プロデューサーは、映画を作る前に橋蔵さんが踊る保名をご覧になってるそうですね。
それにしても、毎度ながら指先まで気を配ったしなやかで綺麗な踊りの橋蔵さんです( ̄▽ ̄*)ホレボレ
歌舞伎の廻り舞台を取り入れていることも、奥行きを出しているなぁと感じました。


嵯峨さんの三役も素晴らしいですね。
榊の前と、榊の前の妹で狂った保名が榊の前と思いこむ葛の葉、
そして保名が助けた、人間に化けた狐の老婆の一族の娘狐が恩返しで化けた葛の葉(狐)。
全部の演じ方が違う。
榊の前は、毅然とした強い女性。
葛の葉は可憐で優しい女性。
葛の葉(狐)は、許されない愛に苦しみながらも、母性があるふれる女性。
見事に演じ分けていて、しかも嵯峨さんが持つ色香がなんともいえず、
この時代を演じるのにぴったりで、こちらもホレボレ( ̄▽ ̄*)

演出面では、先に述べた廻り舞台の他、
人間に化けた狐が狐に戻ったことを表す「狐の面」や、
アニメーションで表現される狐
(アニメ部分は東映動画が担当したそうで、冒頭の絵巻も東映動画製作らしいですよ。
わざとらしくなく、幻想的に溶け込んだ狐のアニメ部分も良かったです^^)

更に、ラストで狐が消えると同時に家が草むらになる、舞台装置のような展開といい、
実写映画とアニメと舞台が融合した映画なんですよね、これ。
(他にも外ロケ使わないでわざと舞台装置っぽい、保名と葛の葉(狐)の住む家とその周辺など←家は廻り舞台の上にのっていて、アングルをカメラの位置を変えるでなく、廻り舞台が廻って見える位置が変わる場面がありますよね)
この実験性は買いたいなぁと個人的に強く思う次第でございます。

保名と、葛の葉(狐)の間に生まれた赤子が、映画では述べてませんがかの「安倍晴明」でございます。
(安倍晴明の出生の謎伝説)。

踊りの振り付けや、浄瑠璃や清元、三味線に人間国宝が4人も参加されているそうです。
(1962年の「別冊 近代映画 恋や恋なすな恋特集号」より)
伝芸好きの方も是非。



最後保名が石になってしまうのは、
榊の前を失ったことで「保名狂乱」を踊った場面で小袖をひっかぶってうずくまりますが、
再び葛の葉(狐)を失い、
愛情というか恋心が極まったゆえに石と化してしまったと私は解釈してのですが、
皆さんはいかがでしょうか?





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テーマ:時代劇
ジャンル:テレビ・ラジオ
コメント
この記事へのコメント
録画無事成功でひと安心
やーーーっとこさ、観られましたよ!

自他共に認める妖怪なもんで、狐に感情移入し過ぎて目汁が☆
まさか狐目線で映画を観るなんて(笑)

終始独特の世界観ですが、舞台と絵本を見ているようで心地良かったです。

狂乱の舞シーンでは、今まで観た橋蔵さん作品の中で最も踊りを堪能できやした♪
カメラの切換えも少なかったし、長回しで撮ったのでしょうか。
おかげで流れが途切れる事なく、観ている方も雲の上に居るかのような感覚に浸れました♪

しかし、その後の場面展開には驚かされましたわ。
背景の布が落っこちてアラま地上って!
斬新過ぎて、真似したくてもなかなか出来ない手法ですよね。

「姫はどこぢゃ?この世に霊があるならば、今一度会わせて下され!」の後の「せめて姫に似た人に」って台詞にゃ、思わず「そりゃねーぜセニョリータ!」て突っ込みそうになりやしたが(笑)

狐の演出は、変に特殊メイクでやるより、シンプルな面を使用したのが効果的だと思いました。
表情が無い分、面の角度や体の震えなどで、より一層心情が伝わります。
日本昔話っぽいニヲイもあり・・市原悦子の声が聞こえてきそうでドキドキ(笑)
介抱シーンは艶めかしくて、これまたドキドキ♪耽美ですなぁ♪

終盤の舞台仕立てなあばら家も、絶対に普通の映画では見られない演出だろうに、作品の世界を壊す事なく見事に調和しているし。

スゲーよ吐夢!アッパレぢゃ!と唸りっぱなしでしたわい。
同監督作品は『飢餓海峡』しか観た事ないけれど、他もチェックせねばなるまい。

最後保名が石になってしまうのは・・何故でしょうね?受け手に考えさせる自由な結末なのでしょうか。
行き場を失った思慕を石になって封印し、姫の人魂がその石を包んで守っていく・・ようにも感じましたが、正直分かりませぬ。
観る毎に印象も変わるかもしれませんしのぅ。その奥深さ、奥ゆかしさがたまらん結末ですなぁ♪

赤子が安倍晴明とは知らなんだ。陰陽師トリビア☆

東映の怪談映画は、まだ全然観てないんですよ。28日にまとめてチェックしようかと思いまして。
どうやら当たり外れが激しそうですな。
まぁ、この猛暑の中、映画で涼もうってのが所詮無理な話(笑)

最後に。
後ほど文子譲のネタをメールで放り込みますので、お手隙な時にでもご覧下しゃれ☆
2010/08/19(Thu) 22:14 | URL  | ふぢを #-[ 編集]
吐夢ワールド
にひたっていただけたようで、私もふぢをさんの感想読みながら、
そうそうっ!そうなのよっ!
・・・・と、いつになく力が(笑)


>表情が無い分、面の角度や体の震えなどで、より一層心情が伝わります。
私の言葉が足りない部分をふぢをさん、補完ありがとー。
そそ、それは感じました。
メイクしたら顔の表情が出るかもしれないけれど、逆にそれでは浮くような感じなんですよね。
面にすることにより、観る側の想像力も喚起しつつも別のアプローチから表情を魅せるのがうまいにゃと。

演出の一つ一つがほんと興味深くて、
橋蔵さん云々関係なく、
あの演出自体に魅せられちゃって、
「こんなに考えて作られてるのに、何でもちっと評価されんのぢゃ!ヽ(`Д´)ノ」
と、ちともどかしく感じていたので、ふぢをさんの感想ににやりとさせていただきました^^。
しかし・・・・この映画、ある意味(その実験性が)ちと時代が早かったかもしれませぬね。
現代だったらどう見られるのか?とも思ったりします。

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怪談映画は、あともう一本今月東映でやったのが残っているのですが@怪猫からくり天井
これもちら見した感じでは恐そう(笑)なので、
ハズレは一本だけじゃないですかねぇ?(私的には)
当たり作品は、恐さだけではなく、悲しさとか業(ごう)の怖さも深く描かれているように感じたのですが、
ふぢをさん、ご覧になられたら是非投下を(笑)
現在のところ私的には
「怪談お岩の亡霊」>「怪談 三味線堀」>>>>>>>>>>>>>>>(超えられない壁)「怪談 番町皿屋敷」でしょうかね。
「番町皿屋敷」は、恐さが無いってだけぢゃないんですよ。ダメ作品な理由は。
役者を見せて、物語を見せないところに×印したようなものです。
演出も気に食わなかったし(笑)
ところが、監督は河野寿一氏なんですよね。
それ知って「ええええっ!」
橋蔵さんの「花吹雪鉄火纏」大友さんの「怪傑黒頭巾」千代之介さんの「白扇」とか右太衛門御大と橋蔵さんの「朱鞘罷り通る」「花の折鶴笠」錦之助さんの「織田信長」二本などなど・・・・
テレビの方も「新撰組血風録」とか手がけている方ではないですか!!

好きな作品も多いのに、何でじゃ・・・・・と目が点の熊猫屋。
脚本の人も、これまた好きな作品が多い人だったりして、
何がいけなかったの?と首をかしげたのですが、たまにはこういうこともあるということで^^;

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文たん、28日楽しみですぅ~♪
実際見られるのは数日先になると思うのですが、
ドSな文たんを堪能させていただきます。

・・・・・文たん洗脳されそうだな(笑)



2010/08/24(Tue) 20:33 | URL  | 熊猫屋 #-[ 編集]
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